2004年(平成16年)4月10日号

No.248

銀座一丁目新聞

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茶説

子供は無限の可能性を秘めている


牧念人 悠々

  どんな人間も皆懸命に生きている。とくに子供は無限の可能性を秘めて成長する。だから温かく見守り、分別をもって接していかねばならない。川崎市で37歳の主婦が小学2年生の長男を殺害する事件があった(4月6日)。この主婦は塾に通わせるのが成功の道と信じており、それが子供のためだと思いこんでいる。塾をいやがるのはそれなりの理由がある。表向きはゲームに熱中していて塾に行くのをいやがったということだが、子供を死なしてしまってはもとのこもないではないか。
 遺伝子の研究家、村上和雄さんは「不登校児は今の受験教育中心の学校、ひいてはそれを学校に求めている社会のゆがみからうみだされているのではないか」といい、また「彼らは学歴社会の迷子などではなく『学校へ行かない』道を選んだ優れた子供たちではないか」といっている(村上和雄著「生命の暗号A」)。この様な柔軟な発想が子供の母親に欲しかったと悔やまれる。
 前掲の本には26年前から不登校児を受け入れ成果をあげている大越俊夫さんの師友塾を取り上げている。師友塾では不登校児の極めて高い潜在能力や可能性を「癒し」や「遊び」の機会をふんだんに用意することによって開花させている。環境を変えること。元気を重視し、感動を与えることが不登校児再生法であるという。
 あらゆる能力や可能性の源は遺伝子にあると村上さんは言う。環境の変化や心のあり方で遺伝子のはたらきが変わる。人間万々歳ではないか。「なせば成る何事もならぬは人のなさぬなり」は言い得て妙である。人間の心がけ次第である。遺伝子の働きいかんで人間はさまざまに変わりうる。ともかく、黒白と即断しないこと。選択肢は赤もあれば黄色もある。慌てずに子供の成長を見守ればよい。茶髪の子もいじめっ子もそれなりの理由がある。それは生きる信号であり、SOSでもあるかもしれない。子供は親のいやがることをしでかす動物である。そのささやかな挑発に乗ってはいけない。育むとはよい枝をのばし悪い枝をつばむを言う。だから「親」というのである。

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