2003年(平成15年)11月10日号

No.233

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(32)

―今年の2冠・3冠― 

  「まるで雲の上を飛んでいるようでした」。ペリエ騎手は、勝利後のインタビューで、そう語った。レース後の騎手の談話はとかくありふれた、紋切り型のもが多い。そんな中で、ペリエの感想は、豊かな感性を感じさせる。今年の天皇賞(秋)の記録には、優勝したシンボリクリスエスの名とともに、ペリエの言葉も残るだろう。
 今年の競馬も、そろそろ総決算の時期を迎えつつある。そこで、秋の大レース、特にGTレースについて記しておきたい。天皇賞(秋)のことは後に譲るとして、開催順に取り上げる。まず、3歳牝馬の秋華賞(10月19日、京都・芝2000メートル)。2番人気のスティルインラブ(幸騎手)が1分59秒1で優勝。メジロラモーヌ以来17年ぶりの牝馬3冠を達成した。2着は1番人気のアドマイヤグルーヴ(武豊騎手)で、0秒1差。中団から追い込んだが、届かなかった。この1、2着馬はともにサンデーサイレンス産駒で、これも記録に残る。
 一方、3歳牡馬の菊花賞(10月26日、京都・芝3000メートル)のほうは、5番人気のザッツプレンティ(安藤勝騎手)が3分04秒で優勝。2着は4番人気のリンカーン(横山騎手)。1番人気で3冠の期待がかかっていたネオユニヴァース(デムーロ騎手)は3着。9年ぶり史上6頭目の3冠制覇は成らなかった。優勝したザッツプレンティはダンスインザダーク産駒で、父が勝った菊花賞を父子2代制覇したことになる。ダンスインザダークは大種牡馬サンデーサイレンスの子で、特に長い距離に強いといわれていたが、今回の菊花賞で実証して見せたことになる。なお、5着マッキーマックスもダンスインザダーク産駒。2着から4着までがサンデーサイレンス産駒。いずれにしても、サンデーサイレンスの血統的評価をさらに高めたことになる。
 4歳以上の精鋭による天皇賞(秋)は、先に触れたように、ペリエ騎乗のシンボリクリスエスが、見事な優勝を飾った(11月2日東京・芝2000)。しかも1分58秒0のコースレコード。直線で抜け出すときの豪快な瞬発力はさすがで、モノが違うところを見せつけた。これで去年の秋の天皇賞と連覇。この後は、ジャパンカップと有馬記念に出走する予定と伝えられる。激しいレースの影響を考えると、有馬記念だけに絞ってもいいと思われるが、厩舎側は強気のようだ。「後の2つも勝ちたい」(藤澤和調教師)と、夢は大きい。
 もし勝てば、馬主のシンボリ牧場にとっても、シンボリルドルフ以来の名馬誕生となる。シンボリルドルフは、1960年にジャパンカップを制し、59年と60年に有馬記念を連覇している。シンボリクリスエスにも、大記録を期待したい。そのときペリエ騎手は、その感激をどんな言葉で語ってくれるだろうか。

(戸明 英一)

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