1999年(平成11年)3月10 日

No.67

銀座一丁目新聞

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茶説

家庭のあり方に政府は口出し無用だ

牧念人 悠々

 「育児をしない男を、父とは呼ばない」。政府が進める少子化対策のポスターの文句である。

 男性の育児と少子化は全く関係がない。戦前、男性は「寝食を忘れて」働き、「家庭をかえりみず」仕事に打ちこんだのに、子どもが十人前後いる家庭は珍しくなかった。

 男性が育児をしなくていいといっているのではない。女性の社会への進出が増大傾向にある現代、政府に言われなくても、男性は育児を手伝っている。手伝わなければ、共働き家庭はやっていけない。父親の平均育児時間が1日17分だそうだが、現実にはもっと多いような気がする。

 社会部記者であった筆者は、戦後おきた下山事件、三鷹事件、造船疑獄、日通事件、ロッキード事件など、ほとんどの大事件の取材にあたった。そのため育児などしたことはない。全くできなかったといっていい。それでも2人の子供は父と呼んでくれている。当たり前だ。

 家庭は夫婦で築くもの。そのあり方は千差万別である。それぞれの家庭が事情に合わせて育児、家事の分担を決めればよいことだ。政府の口出しは全く無用である。

 旧陸軍では「一に健康、二に成績、三に留学、四に女房」といった。これが将官への栄進の四条件と言われたそうである。これを聞いたアメリカの幕僚が「現在のアメリカでは四番目は不必要である」と言下にいってのけた。アメリカでは幕僚になったら最後、離婚を覚悟しなければならないという。つまり、多忙な幕僚は毎朝6時半には出勤し、帰宅は夜12時すぎる。こんな生活がつづいたら、たいていの奥さんはたまりかねて逃げてしまう。ほとんどの幕僚は離婚の経験者である。(児島襄著「戦史ノートより」)

 育児をしたくても、また家庭をかえりみたくてもできない仕事を持つ男性はたくさんいる。その男たちのことを考えたのか。

 “平和ボケ”のコピーといわざるをえない。約5億円をかけたPRだそうだが、税金の無駄使いというほかない。年度末で予算が余ったから使おうというのであろうか。そうだとすれば、納税意識をそぐことはなはだしい。

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