2003年(平成15年)7月10日号

No.221

銀座一丁目新聞

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茶説

イラク特措法案に思う

牧念人 悠々

 ともかく、イラク復興特別法案の成立の見通しがついた。この法案は自衛隊をイラクに派遣して輸送機による人道物資空輸と浄水などの任務にあたり、イラクの復興を支援するものである。すでにイラクには米英はもちろんのこと15ヶ国の軍隊が展開している。国際協力からも対米協力の意味からも自衛隊の派遣は当然だと思った。毎日新聞の世論調査によると、賛成は19l、反対は38l、どちらともいえない39lである(7月7日)というから驚いた。筆者の意見は小数意見である。日本の国情がそう簡単ではないのがなんとも情けない。まず、憲法の制約がある。「湾岸戦争のようにスタンドにいてお金を出して声援するのでなくて今度はグランドに出て汗を流してほしい」といわれても、国を守る自衛のための自衛隊である。建前上軍隊ではない。即座に海外には派遣するわけにいかない。これが外国から見ると不思議に見える。海外に派遣するためには法律が必要である。だから、政府は無理しても法律を成立させようとする。「戦闘地域でなく、将来も戦闘地域でない地域に自衛隊を派遣する」という。こんなバカな話はない。危険だから自衛隊を出すのである。自衛隊は「戦う集団」ではないのか。イラクではテロが発生しており、すでに米軍に30人以上の犠牲者が出ている。戦闘地域、非戦闘地域を分ける自体意味がない。賛成が少ないのもわかるような気がする。
 攻撃を受けた場合、正当防衛の範囲内で反撃がゆるされるという。戦いの場面は千差万別である。その対処の仕方は現地指揮官の判断に任せるべきで、武器使用を含めて法律でこまかく決めるべきものではない。
 もちろん政府も腹の中ではわかっておりながら、憲法の枠内、個別自衛権に縛られて建前論的発言に終始したのであろうと察するが、もっと本音をを出してもよかったのではないか。「戦闘地域でないから自衛隊を出す」と言うのはあまりにも自衛隊を侮蔑している。自衛隊の実力を知らなすぎる。1991年6月、湾岸戦争の終結時、日本の海上自衛隊の6隻の掃海部隊(群司令落合o一等海佐・511人)がクウェート港沖海域に派遣された。ペルシャ湾の掃海にあたった9カ国海軍の一番最後に参加した。軍規厳正で寄港地でのマナーもよく評判がよかった。難しい海域での掃海であったが、一件の事故もなく、34個の機雷を処分した。今回もイラク派遣は他国より大幅に遅れる。恐らく軍規厳正で評判もよく、その任務を十分果たすであろう。気持ちよく自衛隊を派遣し、国際協力の実を挙げるためには、早急な法整備が必要である。世界の常識がいつまでも日本では非常識では困るからである。

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