2003年(平成15年)7月10日号

No.221

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(20)

−練達の士− 

  この不景気に競馬で2億円を獲得。そんな男がいるというので、もっぱらの話題になっている。先日の宝塚記念(6月29日・阪神)で、ヒシミラクルの単勝1点買いに何と1200万円を注ぎ込み、1億9900万円超の大金を稼いだという。馬券の購入金額が大きいのだから、獲得金額が大きいのも当然だが、ケタが違うので、一般ファンはドギモを抜かれた。
 勝ったヒシミラクルは6番人気で、単勝配当は1630円。決して人気薄の穴馬ではない。むしろ2着に入ったツルマルボーイのほうが人気薄(8番人気)で、馬連は万馬券(1万4080円)になったほどだ。だが、今回の話題の主は、この馬連を買ったのではなく、単勝の1点に絞っている。そのことに注目したい。なかなかの練達の士であることを示している。
 しかも、勝負に徹している。それは元手の投じ方に現れている。今回の宝塚記念の単勝に1200万円を注ぎ込んでいるが、その資金は、その前の安田記念(アグネスデジタル)の単勝的中(配当940円)で獲得したものであり、更にさかのぼれば、ダービー(ネオユニヴァース)の単勝的中(配当260円、50万円購入)が元になっていると推測される。つまり、50万円を元手に、3回の「単勝転がし」という方式だ。
 もう少し、考えを進めてみよう。彼が3度の「単勝転がし」をしたとしたとすると、最初の元手は50万円ということになるが、果たしてそうなのか。それ以前にも「単勝転がし」によって、資金を増やしていたのではないか。一般のサラリーマンの傾向からすれば、1つのレースの単勝に50万円は投じにくい。もっと少ない金額からスタートし、的中した配当金を増やしていったのではないか。大レース(特にGT)だけに絞っているやり方からすれば、例えば、桜花賞(スティルインラブ、350円)、皐月賞(ネオユニヴァース、360円)から、「単勝転がし」をしていたのではないか。あるいは、その前のスプリングステークス(ネオユニヴァース、280円)からとも考えられる。それぞれ配当は安いが、狙えるだけの実力馬が勝っている。むやみに穴を狙わず、むしろ手堅い。「練達の士」と評する理由がそこにある。今回の話題に羨望の念を抱いた人は多い。だが、「転がし」方式の価値にまで眼を向けた人は少ない。この方式を試みる上での心得の1つは、獲得した配当金を、「飲み食いなどに絶対に使わない」ということだ。普段の小遣いとは別にする。それができる人は、素質がある。試してみることをお勧めしたい。

(戸明 英一)

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