2003年(平成15年)6月20日号

No.219

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(18)

−“未知”への期待− 

 馬主になれないファンが、ペーパーの上だけで仮の馬主になり、馬主の気分を愉しむ。そんな遊びが盛んだ。競馬ファンなら、どなたもご存知だろう。それはPOG(ペーパーオーナー・ゲーム)という遊びだが、うまくいけば、ダービー馬やオークス馬の馬主の気分も味わえる。そんな夢を追いかけるのである。
 ゲームのスタートは、夏競馬の始まる6月21日。この夏競馬には、早くも来年のクラシックを目指す2歳馬がデビューする。いわゆる新馬戦が始まる。能力未知数の馬ばかり。それこそ、まだ「海のものとも山のものとも知れぬ」と言っていい。早い話、走ってみないことには分からないのである。その未知数の馬たちの中から、これぞと思う馬を選び出してオーナーになるのだから、それこそ「雲をつかむ」ような、頼りなさをはらんでいる。
 そこで、選択の頼り(拠り所)にするのが、まず第1に、いわゆる血統的背景というやつだ。その点で言えば、今年もサンデーサイレンスの産駒に人気が集まっている。前回も触れたように、先日のダービーは、1着から5着までのすべてが、サンデーサイレンスの遺児と孫だった。そのサンデーサイレンス(昨年死亡)の最終年産駒(01年生まれ)が、人気を集めるのも当然と言っていい。だが、数が多いので、選択に悩まされるところだ。
 新聞・雑誌なども関連情報を流すが、いわゆる「評判」というやつで、この「評判」には当てにならないものが多い。例えば、「1億5000万円の高額馬」などという情報もその1つだが、「期待が大きい」というのは、書いた記者の主観か、馬関係者の希望的観測に過ぎない。実際に活躍するかどうかは、未知数なのである。昨年の例だが、「1億7000万円の高額馬」が、デビューを待たずに死んでしまった。不運といえば不運だが、考えてみると、「セナ」という名もよくなかったような気がする。ドライバーの「死」を連想した人もいる。このような死亡例は別として、高額馬が必ずしも活躍するとは限らないわけだが、血統・馬体のよさから高く評価されることも少なくない。今年の2歳馬では、関東馬だが、サンデーサイレンス産駒のレゴラスなども高額馬の1頭(1億5000万円)。マイラーズカップなど8勝したローエングリン(父シングスピール)の半弟。父がサンデーサイレンスに代わって、さらに活躍しそうな気もする。果たしてどうか。そんなことを考える愉しみが、夏競馬の新馬戦にはある。

(戸明 英一)

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