2003年(平成15年)6月20日号

No.219

銀座一丁目新聞

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花ある風景(133)

並木 徹

 スポニチ登山学校の2期生から8期生の生徒達が山の写真展を開いた(6月13日〜19日)。場所が銀座の富士フォトサロン(中央区銀座5−1銀座ファイブ2F)というから驚きである。この会場は写真技術の水準の高いグループにしか貸さないと定評のあるところ。作品は33点。テーマは「山と樹林」。いずれも力作である。山に登るだけでなく、写真にもはまりこむというのだから脱帽である。
 原嶋昇治さん(2期)「水面に映える紅葉」紅葉と水面のコントラストが見事である。バランスがいい。高沖義則さん(2期)「厳冬の剣岳」 迫力がある。写真に情熱とお金をつぎこんでい るのがよくわかる。同期生のお祝いのために駆けつけた2期生の河村保男さんの姿もあった。元中学校の校長先生で文章も歌も上手い。卒論には「厳しき寒さに震えつつ/山の頂きに立ちしわれ/雲海の彼方に茜色見ゆ」と歌った。吉田由美子さん(7期)「北アルプスの晩夏」イワシ雲を大きく捕らえた構図がいい。詩情があふれている。吉田さんはベーシックコースの卒論の作文で賞をとった。「スポニチ登山学校の校則がそのまま私の人生訓になりました」と嬉しいことを書いてくれた人でもある。
 33点の作品の中で人を写真の中に収めたのが井山昭武さん(2期)と国分りんさん(7期)の二人だけである。私は「絵葉書のような写真を撮るな」を心情としている。もちろん、自然は美しい。それはそれでよい。今回も見事な写真が展示されている。人との何らかのかかわりが欲しいと思うだけである。国分さんの名前には記憶がある。卒論の作文の審査の際、吉田さんか国分さんかどちらを選ぼうかと迷ったからである。国分さんは登山学校に不似合いな校則第3条
 「常に情誼厚き人間たれ」を一番理解し、自分のモットーとした。話してみて明朗で前向きである女性であるのがよくわかった。総代で卒業証書を受け取った7期の渕上勝子さんはともかく若い。顔が生き生きしている。「私の顔覚えていますか」と聞く。美人は忘れない。次男のピアニスト、渕上千里さんが9月2日浜離宮朝日ホールで開く室内コンサートの案内を頂いた。行くことにする。3期の野田文子さんが声をかけてくれた。3期といえば卒業して5年になる。彼女は山に登る人、マラソンをする人を神様だといった。自分自身の「生きている」という実感が欲しいともいった。元気そうである。山はこの人に「気」を与えている。
 スポニチ山岳写真教室での講師の存在は見逃せない。写真家の藤田弘基さんである。ヒマラヤ、カラコルム、アルプスなど世界の山々を撮りつづけている。その指導よろしきを得てここまできた。登山学校での年6回の写真講座が発展して課外授業となったのは嬉しき限りである。

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