2003年(平成15年)6月1日号

No.217

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(16)

−不正疑惑− 

 米国競馬の3歳3冠レース第一関門ケンタッキーダービーで、1着馬(ファニーサイド)の勝利に疑惑があると報じられたのは、衝撃的なニュースだった。新聞(マイアミ・ヘラルド紙)がゴール時の写真を掲載し、騎手のホセ・サントスが右手に黒いものを持っているように見えると、疑惑を指摘したのだ。だが、レース裁定委員会の調査の結果、「違法行為の証拠は何もなかった」と発表された。右手にムチと一緒に持っているように見えた黒っぽいものは、隣の馬の騎手の影だったという。ところで、この幻の事件で疑惑が持たれたものとは、馬を速く走らせるために電流を流す仕掛けの電気機器。そうではないかと思われたのだ。
 技術革新により、電気機器も進歩している時代である。電流の刺激を与える機器が、開発されてもおかしくない。その用途の一つとして、馬への使用も考えられるだろう。ただし、馬の能力を一時的に高める手段として電気機器を使うのは、不正行為として禁じられている。興奮剤などの薬物使用が禁止されているのと同様である。馬の能力を一時的に高めることでは、薬物が使用された時代があった。だが、電気機器の使用事例は少ない。そうはいっても、日本にも過去にはこんなこともあった。レース中のことではなく、スタート時のゲートでのことである。出遅れ癖のある馬に、電気ショック器を使用したのだ。もちろん不正行為である。競馬の公正確保に違反するアンフェアな行為として処罰された。ちょっと変わった例では、こんなこともあった。馬の耳の中に、小型の発信機を入れていた事件だ。スタート時やレース中に使用して発覚したものではなかったが、やはり処罰された。発信機使用の真の意図は何だったのだろうか。それはともかく、これに似たようなケースが、今後も起こらないという保証はない。
 ところで、競馬が他のスポーツ競技と異なるのは、主役が馬であることだ。もちろん馬の能力を十分に発揮させるのは騎手の手腕だが、出遅れ癖のある馬の扱い方は名手と言えども難しい。例えば先週5月26日の「オークス」。「桜花賞」でも人気になりながら出遅れたアドマイヤグルーヴが、またしても出遅れて敗れた。名手・武豊騎手でも、如何ともしようがなかったわけだ。このような馬の場合にも、出遅れないために、電気機器などの使用はできないのである。
 さて、その「オークス」だが、2着に関東馬の13番人気チューニーが食い込んで波乱となった。チューニーに対する期待については、本欄でも、過去のレース振りと血統的な魅力に触れたところである。ご記憶の人も少なくないだろう。波乱の片棒を担いだといっても、こちらのほうは正々堂々たるレース振りだった。

(戸明 英一)

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