2003年(平成15年)4月20日号

No.213

銀座一丁目新聞

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花ある風景(127)

並木 徹

 友人から社交ダンスを進められている。思案にくれている。ダンスを習いたい気持ちも多分にある。戦後まもなく見た吉村公三郎監督・新藤兼人脚本の映画「安城家の舞踏会」(1947年、松竹大船作品)の素晴らしいダンスのシーンが忘れられないからである。敗戦とともに没落した貴族に扮する滝沢修と原節子が安城家最後の舞踏会で踊ったワルツの鮮やかなスッテプが今なお鮮明に残る。あのように踊りたいとは思う。
 我が愛妻はダンスができる。教室へせっせと通い、デモンストレーションも数回開いている。その写真も我が家に飾ってある。かなり上手い。自慢話がある。数年前、ヨーロッパ旅行での出来事である。ウィーンの公会堂でダンスの会がひらかれた。居合わせたアメリカの旅行団は全員がダンスに打ち興じた。今度は日本の旅行団が踊る番である。誰も出てゆかない。仕方なく、妻が元船長だった男性と一組だけでステップをきった。終わると、その見事な踊にアメリカの旅行団から割れんばかりの拍手喝采をあびたという。
 さる日、毎週火曜日の夜に開いているダンス教室に友人達の踊りを拝見にいった。中級クラスで二人の友人の踊は手馴れたもので楽しそうであった。いずれも中年の人たちで、女性の方が多いので男性は大歓迎だと誘われた。
 「安城家の舞踏会」を見てからから56年。音楽は好きだが、音痴で音楽のリズムにスッテプがあわない。大げさにいえば、なかなかルビンコン川を渡れないのである。

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