2003年(平成15年)4月1日号

No.211

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(10)

−機械は信用できるか− 

 買うつもりの馬券が買えず、高配当を手にできなか
った。というような経験を持つ人は多い。その場合の事情にも、さまざまなものがあるようだ。ところで、その事情が、自身のミスに属するものでなかったとしたら、口惜しい想いはさらに忘れ難いだろう。そんなことを思わせる事件があった。
 その事件のあらましは、次のようなものだ。場外馬券売り場の自動券売機で馬券を買おうとしたら、馬券が出てこないうちにレースが始まったのだ。レースは荒れて万馬券になった。配当は1万7150円。その的中馬券の購入金額は1000円。払い戻し金額は17万1500円となる。だが、馬券は手元にない。なぜなら、機械の故障で馬券が出てこなかったからだ。投票カードに間違いなく数字も記入。券売機に紙幣と購入代金を入れたが、なかなか発券されないので、職員を呼んで機械を点検しているうちに、出走時刻になってしまったのだ。券売機が紙詰まりを起こして故障し、職員の点検が発走時刻に間に合わなかったというわけだ。
 この事件は、裁判沙汰になっている。券売機の故障で配当金を受け取れなかったとして、馬券を購入しようとした男性が、JRAを相手に、配当金など(弁護士費用を含む)約25万6000円の損害賠償を求めた。「配当金を払え」「払うことはできない」と、争っているわけだ。この場合の論点の1つは、「売買が成立しているかどうか」にあるようだ。男性側は、「現金と投票カードを機械に入れた時点で売買は成立している」と主張する。だから、配当金の払い戻しをしろ、というわけだ。これに対してJRA側は、「馬券が発券された時点で売買は成立する」との主張で、「理由が何であれ、投票券が発売されていない限り払い戻しはできない」と、請求の棄却を求めている。どんな判決が出るだろうか。「幻の万馬券」に終わるのだろうか。
 ところで、券売機の問題である。馬券を買うときの投票カードは、場名や馬券の種類、レース番号、枠番や馬番、金額などを塗りつぶすマークシート方式になっている。だが、記入が正しいのに発券されないことがある。感知・識別の不具合な券売機があるのだ。機械の点検に万全を期しているのだろうか。前述の事件を機に、そんなことも考えさせられる。
昨今は社会のさまざまな分野で、機械・設備などの点検不備による事故が多い。特に「ファンサービス」
を第一に掲げるJRAとしては、心すべきであるのはいうまでもない。

(戸明 英一)

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