銀座俳句道場 道場試合第19回決着!!  

10月の兼題は  「行く秋」 「秋時雨」 「夜食」 でした。

 多急に寒くなりました。ご自愛下さい。
※ 十一月から、月に一回東京都千代田区湯島にて「寺井谷子の俳句講座」が開かれることになりました。これはNHK「俳壇」の投稿者から、直接指導を受けることは出来ないか、という声が上がり、以前からそのような希望を持っておられた方が中心になって、開かれる運びになったものです。
     十一月は十四日(木)午後一時から三時まで。
     十句を書いて持参、全句講評の予定です。
     地下鉄「末広町」からも近くの会場です。
会費、会場など詳細は
  青木栄子(п@〇三−五七〇〇−二一七七)へ。    (谷子)

 

 美しい一句でした。ゴンドリエ=ゴンドラの船頭の美声が、ベニスの運河をゆるやかに流れて、秋行く風情を濃いものにしています。

 秋時雨が過ぎる中、捨てられたビニール傘がいっそう冬近い雰囲気を伝えます。

 「一日」「二人」という数の重なりが、この一句では成功しました。
 静かな雰囲気を深く伝えてきます。

【入 選】

秋時雨ペットボトルの羽根車      章司

行く秋の梢の上なる雲一片       ふづき

順を待つ就職相談秋時雨       もとこ

   【投稿句】 (順不同・赤い字は選者添削、◎は入選)

 行く秋や 呆けて佇ちぬ九十九里   鳥取祥子
秋時雨 目鼻顕わる同祖神
  道祖神
 勉学の背に一声の夜食かな 

 行く秋や朱色が滲む煉瓦塀     中土手
  悪くない一句ですが、「滲む」は、伝達性いささか不足。
 行商の姉さん被り秋時雨   
 夜食とる団欒の影なかりけり   

 行く秋や嵯峨野めぐりの一人旅   松村竹雄
  どうも「一人旅」というのは演歌っぽいですね。
智恩院の山門仰ぐ秋時雨
ひとり身のコンビニ弁当夜食かな 
  現代の夜食風景ですね。

 若さゆえ夜食の「や」の字は痩せるの「や」  ちあん
  解るような、解らぬような。
行く秋を観光バスの連なりて
一日を終えしやっちゃ場秋時雨
                   
寂しさの音も連れ来る秋時雨       花子
  寂しさを「音」で捉えたところ、結構です。
さよならと告げて悔やみし秋時雨
 海隔て共に見上げる秋時雨

秋時雨いよよ傾く斜塔かな         山本 洋光
 結構です。この調子で。
夜々夜食運びてくれし亡母のこと

 夜食の子 さあ勉強が 夢の中      意久子
 治療終え 扉開けるや 秋時雨
  あまり丁寧に時間経過を書かなくてもよろしいです。
  訪ねた折にしてみましょうか。
  「秋時雨重き扉の治療院」

行く秋や 居眠る母の 背(せな)まるく
秋の夜 居ねむる肩を 揉み呉し

 ゆく秋や細雨かすみて村ありき    蒼流
 傘の花街に沈んで秋しぐれ
  「秋時雨街に沈みし傘の花」
 半世紀波乱しみじみ夜食かな
  「半世紀の波乱しみじみ夜食かな」

 行く秋に 日ざし追いかけ 子ら集い   土橋喜代
  「行く秋の日差し追いかけ子等集う」
 一日の花房 散りつつ 秋ゆけり
 行く秋に友の両手に血管の浮く
  「行く秋や友の両手に血管浮く」

 行く秋に里の野道も繁りけり      西尾正巳
 秋時雨生駒の山も遠くなり
  「秋時雨生駒の山の遠くなり」
老い二人話しも無くて夜食食う

行く秋や寄添って往く長き影       方江
 黙々と子等巣立ちたる夜食かな
  これでは「黙々と子等が巣立った」みたいです。
  西尾さんの作品と共通の思いかと存じます。
  「子等巣立ちたる後の夜食の黙(もだ)深し」

独り居て古書読む窓辺秋時雨

 行く秋や 古里で待つ 彼の地の子    古井一歩
  思いはわかるのですが、「古里」「彼の地」がいささか重なり過ぎの感。   
 秋時雨通り過ぎれば虹の橋
 新宿御苑菊花壇に出合う秋の名残
  「新宿御苑秋の名残の菊花壇」

行く秋や畳に足を投げ出して             河彦 
通夜帰り夜食の膳に面影が 
 秋しぐれ 隠れるものも なきままに  

 ラガーらのその縞しまの蹴り上げる    清七
秋の雨リハビリ病院欧米風
 リハビリや介護の二食夜食喰う
  「リハビリや介護の二食と夜食喰う」

 行く秋やわが名知る人なき家並み       美沙
秋しぐれ心の森の深くなる
インク匂う地下食堂の蟻の夜食
  「蟻のごと並び地下食堂の夜食」
 
 秋深し男は踏み台イチ、ニ、サン     水蓮
  最初、踏み台を使っての健康法かと思っていましたが、
  どうも二句目を読むと、そうではないようで。笑いました。
  一寸かわいそうですねー。元気な句を書き続けてみてください。

 秋深し男は踏まれて強くなる。

 秋時雨受信メールをのぞきおり     山野 いぶき
  「秋時雨時折メール開きおり」
 秋時雨ブーツに水が入り込み
 冷凍のうどん温め夜食かな

 新幹線窓がきりとる秋時雨             城生子
 電源を切り忘れをる秋時雨
 寮生にやがて夜食と女性論
  「夜食かな寮生たちの女性論」 
             
おもむろに覚め来て猫のいざ夜食    章司 
  もはや家主のような猫ですね。
 行く秋や入日の白きビルの街
行く秋や音確かめつサキソホン
  「行く秋の音確かめつサキソホン」 

 行く秋の指針を止めたし迷い路         さと子
 弾丸に怯える空に秋時雨 (ワシントンに住む娘へ)
  「弾丸に怯える空や秋時雨」
夜食だけが親友と言ふ女子高生 

 サ−クルの 旅は夜食で まとまりし   ふづき
古いすの朽ちてゆくあり秋時雨 
    
 鬼女紅葉としふりし岩屋秋時雨    (せいじ)
鬼女紅葉むかし語るや秋時雨
    「鬼女紅葉」という固有名詞でしょうから、「紅葉」「秋時雨」の季語の重なりは、

   気になりません。
 行く秋や葉付き銀杏の散り放し
 夜食喰う風鈴の音の寒
  「夜食」「風鈴」季語が秋と夏と重なります。   
秋行くやいつも帰りをせかされて    だりあ
 行く秋や大河の水の騒ぎをり
ゆく秋やポストの角の待ちあわせ
  「ゆく秋やポストの角に待ち合わす」
 朝の市 訛りもふふむ 秋時雨      姥 懐 (うばふとこ)10月入門 
  「秋時雨訛りふふめる朝の市」
つましさも 馴染みてひさし 秋時雨
諍いの 後は はすかい 夜食かな
 大息や 窓を曇らす 秋の果て 

日の暮れやまたも降り出す秋時雨     もとこ
大法会終えて秋行く本門寺
 
行く秋やひとり茶をいれひとり飲む     とみい
 カップめんポツリ卓上夜食用     
       
 行く秋やかねの旗竿紐の音      吐詩朗
  「かねの旗竿紐の音」がよく解りません。
夜食より闘病談義古稀の会
 そら耳の蛇の目の唄や秋しぐれ            
  「蛇の目の唄」は、蛇の目傘に降る雨の音、ということでしょうか?
  懐かしい幻聴でしょうか?


 行く秋や 炎からめる蜘蛛の糸     泥臥
  夕焼けの景なのでしょうか。それとも焚き火でしょうか?
 秋時雨 酔うようで酔われぬ 一人酒
  「酔うようで酔わぬ酒なり秋時雨」
 ひそやかに 忍ばせておきし夜食失せ 

行く秋をウィーンの森に置いてきた   坂元宏志
(帰国したら日本はまだ初秋)
  旅吟沢山に、記念にお残し下さい。
 秋しぐれウィーンの気ぐらいそぼ濡らす
行く秋をドナウの波と惜しむかな

窯守りの独り手酌の夜食かな     よし子
笹叢の一葉一葉に秋時雨
  「笹叢の一葉一葉よ秋時雨」

行く秋にさよならと言い手を振りぬ   高木みどり
秋時雨鬼女のごとくに濡れ歩く
 夜食鍋母の仕草をふと思い

 掌に熱さ残れり秋の行く        小島弘子
  何の熱さか。多分手を握り合った熱さでしょうが。
さざ波の湖を漂ひ秋時雨
 国境を描かぬ地球儀夜喰む

行く秋や鏡に写す薄き胸        芽衣子
いつまでも華の独身秋時雨

 フレディの深き睡りや秋暮るる     しづ子
  葉っぱのフレディでしょうが、解らぬ方も居るでしょう。
秋時雨建築現場の音止まず
ナースキャップの働き止まり夜食らし
  「ナースキャップの姿が見えず夜食らし」

 行く秋の セピア茜に 染まりゆく   陽湖
帰途の夫どのあたりまで秋時雨(見舞いの夫をベッドで見送る)
夜食取る父に一日を語る我娘
  幸せな風景、とみえますが、多分お母様へ話す分も、ということでしょうか。

行く秋や栗鼠遊びをる大覚寺      古川孝子
 自家園の焼き芋つくる夜食かな
 家事忘れピアノ練習秋時雨
  「秋時雨ソナチネを弾く主婦の昼」        

 寡黙こそ拉致は悲しき秋時雨       悠々
 行く秋や怒号渦巻く拉致の海  

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp