2002年(平成14年)11月20日号

No.198

銀座一丁目新聞

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茶説

素材をそのまま報道せよ

牧念人 悠々

 朝日新聞、毎日新聞、フジテレビによる横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんのインタービュー報道が問題となった。さらに「週間金曜日」が曽我ひとみさんの家族に単独会見した(11月15日号)。これらインタービューに苦状の電話やメールが相次いだ。このような問題は今後も起こるので考えてみたい。
 ジャーナリズムの取材の原則は
 1、できるだけ当事者から取材する。その努力を怠ない。
 2、当事者が語った言葉をそのままのせる。
 3、素材はそのままにして読者の判断に任せるである。
 これに照らして4社の報道姿勢はどうであったかが問われる。
 キム・ヘギョン(15)とのインタービューの機会が与えられたら記者として飛びつくのは当然である。独裁国家のもと、そのインタービューがたくまれたものとしても乗るべきである。断るのは「読者の知る権利」に背をむけるものである。「配慮を欠く」「策略にのるもの」だという批判は的外れである。たしかに肉親にとって聞きにくい質問をしている。これは多くの読者が一番知りたい質問である。肉親の情に配慮して質問を省略するか、多くの読者の知る権利に答える質問をするか、答えは自ずと出る。
 新聞はテレビの迫真性にかなわない。フジテレビはインタービューのさわりを10月25日夕から速報し午後9時から2時間の特別番組を放送した。(朝日、毎日は10月26日の朝刊で一問一答を掲載した)この放送をみた石原慎太郎都知事は「いかなる告白や説明よりも、政治に引き裂かれた十五歳の少女の血縁への思慕という純粋な人間的涙は、彼女とその母親を襲った悲劇の意味を直裁につたえてくれた」と書く(11月4日産経新聞)。人間の心はその表情にでる。たとへ事前に北朝鮮側から発言する内容を指示されていたとしても本心は隠せない。これが映像の強みである。
フジテレビの広報部長小林穂波さんが「どういう印象を持つか適切かどうかは各視聴者が判断すること」と発言しているのは当然である(10月29日朝日新聞)。また「週間金曜日」の編集人岡田幹治さんは編集後記で「知りえた事を読者に伝えるのはジャーナリストの務めです。このような生の声を伝える事は、長い目で見て日朝も問題の正しい解決に役立つと信じています」と述べている。
 毎日新聞は今回の報道に相当気を配ったようである。それが今の時代の要請である。素材を提供するだけでなく、解説、読者の意見、社説検証など新聞の機能を最大限に発揮し読者の理解と共感をえなければならない。
今回のインタービュー報道は政治的色彩を持つ。また北朝鮮と共犯関係になる恐れすらある。前掲の三原則を守るのは未然にそれを防ぐためであり「新たらしい事実」を発掘する手法でもある。価値観が多様化し利害が錯綜するこの時代の報道は読者に素材を提供、賢明な読者とともに紙面づくりをすべきである。

 

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