2002年(平成14年)4月20日号

No.177

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(46)

-雉(きじ)も鳴かずば打たれまい

芹澤 かずこ

 

 これから先の時期が私にとっては憂鬱な季節の到来。ちっぽけなマンションの専用庭の芝生がそろそろ青みを帯びて来る頃、雑草もいち早く芽を吹き出す。秋の終りと春先に雑草駆除の薬を散布するが、植木や草花に影響が及ばないように極く薄くするので、あまり効き目がない。しかも隣家の若夫婦が全く庭の手入をしないので、まるで野っ原の如くのタンポポなどの雑草がのびのびと生い茂って、実を結んだ種が毎年我が家に飛んでくる。
 目の敵にして幾ら抜いても抜いても一旦はびこった雑草はとても根強くて、そうそう取切れるものではない。お隣りさんが製造元では全く無駄な努力としか言いようがないが、そうかといって放置すれば我が家も即、野っ原化してしまうのでやはり手は抜けない。
 一週間前に時間をかけて目ぼしい雑草を取り除いたばかりなのに、またもやチラホラと見え隠れしているので、家の中の掃除を済ませてから庭へ下りると、僅かな時間の間に燦々とした太陽の下、何とオオイヌノフグリの小さな黄色い花があちこちにこれ見よがしに開いている。「雉も鳴かずば・・・」ではないけれど、こう自己主張されては見逃すわけにはいかない。
 いわゆる雑草と呼ばれている草がつける花は、黄色や白や青などどれも小さくて可愛い花が多い。土手や野原など広々とした所に自然に生えるなら、そのまま生かされるものを我が家の芝生に根付いたばかりに、花の盛りに無残に摘み取られるとは哀れな運命ではある。しかし彼等?は如何にも可憐そうでいて、これがまたなかなか手強い。
 特にオオイヌノフグリは、茎が地下で四方八方に広がっていて、辿ろうとするとプツプツと千切れて追求をかわし、生き延びる。こんなゲリラもどきと毎年空しい戦いをしているのであるから、この時期は憂鬱なのである。



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