2002年(平成14年)1月1日号

No.166

銀座一丁目新聞

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茶説

キーワードは「再生」と「教育」

牧念人 悠々

 今年は政治的にも経済的にもどん底を迎えそうである。日本の政治は常に一寸先は闇である。「構造改革なくし景気回復なし」とする小泉内閣は苦境に立たされるであろう。経済指標も明らかに深刻なデフレに落ちる状況を示している。企業の倒産も続出し、金融機関も安閑としておられないであろう。
 庶民の暮らしも、今年の財務省の予算原案の緊縮振りを見る限り楽になるとは思えない。ここしばらくは「茨の道」が続くと見た方がよい。
 今年のキーワードを「再生」と「教育」としたい。
 英国病といわれ、勢いのなかったイギリスを再生したのは、マーガレット・サッチャーであった。1975年2月、保守党300年の伝統を破って初の党首となった人である。財政と経常収支の二つの赤字に悩むアメリカを克服したのは、ロナルド・W・レーガンである。映画俳優・カリフォルニア州知事から1980年40代大統領になった異色の人である。
 この二人の改革が成功した背景には、国民に熱烈な愛国心がある。両国とも「敵が攻めてきたら、国を守る」と答える国民が9割もいる。それに反して日本では1割しかいないのである。あとの9割は「敵が攻めてきたら、逃げる」と答える国民である。このような国で改革は成功するのであろうか。この話を同台経済懇話会(平成13年12月12日)で自由党代議士、西村慎吾さんから聞いた。もっともな疑問である。
 既得権にしがみつく政治家、官僚。ODA、無償援助など国の金が流れるところに腐敗がつきまとう。この現状を打破しなければ日本の再生はありえない。
 アルゼンチンの経済危機から起きた暴動は他山の石としたい。失業率18パーセント。人口の三分の一が貧困層、債務不履行の額は12兆4600億円という。日本はここまで落ちこまないであろう。国民の総資産1400兆円。対外資産130兆円と日本の経済の基礎構造がしっかりしている。だが、現代は国境なき経済である。どんな事が起きるか判らない。用心するにこしたことはない。
 このほど、大学の先生をしている友人からEメールを受け取った。それによると、「夏、学生を連れてコソボへ行き、若者たちの心の中に革命的な変化がおきるのを目の当たりにしました」とあった。民族の対立、殺し合い、戦争で荒廃した町や村、貧困、肉親との離別・・・コソボの現実が学生たちに与えた影響は測りしれないものがある。教育は生き物である。教育は生きた現場をみせるのが効果がある。百聞は一見にしかずである。
 聖書にいう。「その国に10人の義人が折ればその国は滅びない」。「敵が攻めてきたら、国を守る」と答えた1割の日本人にかけたい。義人とは人の道を行くものである。「義を見てせざるは勇なきなり」ともいう。教育改革の根本をここにおいてほしい。人間の心がしっかりしていなければ、日本の構造改革は成功しない。多くの識者が指摘するように日本は滅亡の道をたどるほかあるまい。

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