2001年(平成13年)11月10日号

No.161

銀座一丁目新聞

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茶説

文は人、添削も人なり

牧念人 悠々

 スポニチ・マスコミ塾をはじめて6年になる。一人でも多く有為の人材をマスコミ界に送りたいと念願して開設した。
 この10月から開講したマスコミ塾は文章力をつけるための講座を主としている。講師陣はスポニチの編集委員、元編集局長、毎日新聞編集委員である。今回、これまでスポニチの部長陣にお願いしていた希望者の作文の添削を筆者が引き受けた。
 文章が下手な人ほどなんとかしたいという気持ちになるから不思議である。作文の題(400字詰め)は「9月11日」「宗教に思う」「国を愛する心」「ある冬の日」である。
 文章の基礎編を担当した講師の鷲巣力スポニチ編集委員は文章上達にとって最も大事なことについて触れた。
 「ものを見る眼、ものを感じる心」

 「自分の経験、感動、思想を伝えたいという情熱である」

 という。
その通りだと思う。それを日ごろから心掛け、たゆまず、努力、実行するほかない。
 作文には自分の気持ちを自分の言葉で書いた者をほめるようにしている。
 今の若者は読書をあまりしないから文章を書くのは下手だといわれているが、そうでもない。一応文章になっている。みんな論旨一貫している。目立つのは「こと・こと文章」である。私もそうである。注意しないで書くと、「・・・ことである」とか、「・・・ことだと思う」というようになりがちである。それと、同じ言葉の反復である。400字の文章に何回も同じ言葉が出くるのは文章が貧弱に見える。やたらに接続詞を使うものもいる。文章の流れをよくし、読みやすくするためには接続詞はできるだけ使わない方がよい。
 新聞文章は

 1、わかりやすい

 2、簡潔

 3、達意 

 を旨とする。小説ではない。ニュースを多くの読者に伝えるのである。この観点からも作文をみている。
作文は、書く人の人柄がもろに出る。恐ろしいと思う。作文の採点も、自分をさらけだし、自分がためされているという気がする。
 新渡戸稲造著・矢内原忠雄訳「武士道」(岩波文庫)には「知識ではなく品性が、頭脳でなく霊魂が琢磨啓発の素材として選ばれる時、教師の職業は神聖なる性質を帯びる」とある。ゆめゆめ、作文の添削をゆるがせに出来ない。

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