2001年(平成13年)10月20日号

No.159

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(28)

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芹澤 かずこ

 

 最近、ボケ防止にとテープを聞きながら易しい対話式の英会話などを始めたので、脳が活性化したのか、それまであまり見なかった夢を毎日のように見るようになりました。夢というのは一瞬の短い時間の筈なのに、長く見ているような気がして、いつも寝足りないような気分。筋書きもあるような、ないような、殆ど目が覚めると忘れてしまっています。
 うちの上司は、よく夢を見て、それもよく覚えていて、それでも忘れないようにメモを取って、ユングの夢占いに照らして何かの暗示だと受け止めているようです。3年前に若くして亡くなってしまった素敵な心理学の先生の影響でしょう。その先生の心理学講座を毎回それはそれは熱心に聴講していましたから・・・。
 以前、殆ど夢を見なかった時でも、その数少ない夢の中には忘れないでいるものもあります。随分と前のことなのに、未だにハッキリ覚えている夢が幾つかあって、その一つに、カラーのものがあります。よくカラーの夢はよくないなどと言いますが、今までにたった一度見たそのカラーの夢は、どこかの店のカウンターに並んでいる三脚の鮮やかな黄色のドーナツ型の椅子で、その椅子を外からなのか、少し離れたところから見ているだけで、その前後のことも何も分らないのですが、その真黄色の椅子だけ、今でも目に焼き付いているのです。
 二つ目は、大きな蛇が太ももに巻きついた夢です。実際には蛇どころか、ヤモリやトカゲなど爬虫類は見るのも厭なのに、夢の中ではそれほど怖い気分ではないのですが、締め付けられるその感触が厭で逃げるのですが、逃げても逃げても追いかけて来るので、家に入って戸を閉めてしまいました。それが素通しのガラス戸で、外を見ると蛇が恨めしげに見上げているのです。よく蛇の夢はお金が入ると言いますが、この時は本当に思っても見なかった大金が入りました。祖父が亡くなった遺産分けです。逃げたり、邪険に戸を閉めたりしなかったら、もっと沢山のお金が入ったのではないかしらなんて、後で欲深なことを思ったものです。
 三つ目は、亡くなった夫の夢です。14年間でたったの一回ですから、随分と少ないのですが、その夫が生き返った夢なのです。
 横になっていた夫が急に目を開けて起き上がったので、
 「貴方はもう死んだのよ…」
 と、私が言っているのです。生き返ったと知ると、飲み仲間がさっそくやってきて誘うので、
 「また飲みすぎると死んでしまうから止めたほうがいいわ」
 と言うと夫はうん、うんと頷くのです。その側で、なぜか叔母が
 「生き返ったのなら私は家に帰らなくちゃ」
 なんて言いながら荷造りをしているのです。これなど、一つのドラマですよね。
 そしてもう一つは、地震の夢。夫亡きあと、30年ぶりで仕事に就いた事務所が両国の京葉道路沿いの6階でした。結構古いビルで、もし地震が来たらどうしようと不安に思った気持ちが、そのまま夢になったのでしょう。でも夢の中の私は、ふわり、と宙を飛んで、みごと河原に着地していました。一緒に部屋にいた筈の人は誰も見当たりません。多摩川のような広い河川敷でしたから、隅田川ではなかったと思います。この夢の話を前述の心理学の先生にすると、川の流れのどちら側だったか、と聞かれましたが、そこまでは覚えていません。なにか、意味があるのでしょうか――。



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