2001年(平成13年)6月20日号

No.147

銀座一丁目新聞

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茶説

ジャーナリズム魂はいきていた

牧念人 悠々

 テレビはあくまでも娯楽機関で、世論を形成するものは新聞と思っていた。その考えをニュースキャスターの鳥越 俊太郎君(元「サンデー毎日」編集長)がぶち壊してくれた。
 鳥越君とは毎日新聞社会部時代、戦後最大の疑獄であるロッキード事件(昭和51年)をともに取材した。また「サンデー毎日」時代、イエスの箱舟事件(昭和55年)で、警察に追われ、世間から非難された信者を守る報道に力を尽くした仲間である。
 その鳥越君が平成11年10月に起きた「桶川女子大生ストーカー殺人事件」に疑いを持ち、平成12年3月から6回にわたり、テレビ朝日系列の番組「ザ・スクープ」でとりあげた。この検証報道のおかげで警察の怠慢と不祥事もみ消しが明らかになった。それだけではない。「ストーカー規正法」成立(平成12年11月24日施行)にもつながった。敬服のほかない。
 鳥越君は今年度の日本記者クラブ賞を受賞した(5月23日のクラブ総会で表彰された)。毎日新聞時代、これといった賞のなかっただけに、嬉しい限りである。日本記者クラブ会報(375号)によれば、選考過程で抜群の支持を集めたのは新聞記者時代に培った徹底した現場第一主義と大勢に流されない取材と報道姿勢だとある。
裏をかえせば、鳥越君のした仕事は本来新聞がやるべきものである。それを新聞が怠ったということである。まことに情けない。鳥越君が毎日新聞を離れてすでに12年たつ。テレビ界にどっぷりつかっているのかと思っていたが、案に相違した。ジャーナリズム魂は生きていた。
 「女子大生の詩織さんが発するSOSに警察は何故耳を傾けなかったのか、市民を助けられなかった警察は一体その時、何を考えていたのか」ここに取材の的をしぼった。すでに実行犯も捕まり、主犯は自殺している。事件捜査はほぼ幕切れというところまできている。だが検証報道はこれからで十分間に合う。
 私が社会部長時代(昭和51年)、時間的制約を受ける第一報の見落とした点、取材不足、誤りなどを正す意味で「追跡報道」と称していくつかの事件、事故をとりあげた。当時、評判になり、新しい報道スタイルになったと自負していたが、それから25年、新聞は活力をなくしたのであろうか。
 マスコミ不信に陥っている被害者を説得、心を開かせ、鳥越君はスタッフとともに番組を完成させた。驚いた事に詩織さんの一周忌の幹事役まで引き受けている。事件記者の鉄則の一つに「遺族とともに泣け」がある。後追い取材の大切さを教えたものである。それにしても鳥越君の暖かい気持ちが嬉しい。
 鳥越君を祝う会(6月13日東京/如水会館)に出席した母親の猪野京子さんは「ここに立つのも辛いのですが、鳥越さんにお世話になったものですからお礼をいいたくて・・・」と挨拶された。鳥越君の隠れた才能を見抜き、テレビ界へ推薦した、作家、澤地久枝さんは「職人よりジャーナリストでいてほしい」と注文をつけた。本人がいくら「俺は職人だ」といっても鳥越君はジャーナリストに変わりはない。

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