2001年(平成13年)4月10日号

No.140

銀座一丁目新聞

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横浜便り(18)

分須 朗子

 天地万物清新な気が満ちあふれてくる卯月清明の節・・・お洗濯がいつにも増して楽しい季節となりました。
 私の趣味は洗濯です。2日に1度は洗濯機を回します。
 衣類と水と洗濯粉が、洗濯槽の中でジャブジャブ渦巻いているのをじっと見ている時間が好きです。太陽の陽射しに包まれて、物干し竿に洗濯物をゆっくりゆっくり吊していく時間も好きです。

 姉が「こんな天気の良い日に家にいるのは勿体ない」と言いました。
 私は「こんな良い天気を無駄使いしたい」と思いました。
 太陽、青空、時間・・・自然は偉大で美しい。ぜいたく過ぎて、対等に立ち向かってもやられるだけだから、使いこなさないでいるのが気持ちいいです。

 洗濯の時間も好きですが、洗濯機のことも好きです。
 私は物に名前をつける癖があります。
 わたしの洗濯機の名前は、初め「ファーファー」でしたが、今では「ゴロゴロ」です。脱水槽へ洗濯物をうまく収めないまま、脱水を始めさせると、ゴロゴロ鳴くのです。何度もふたを開けて、中身を入れ直しても、ガタガタうるさく言うので、ケンカしたことがあります。冬には、「ひゃーっ」になります。洗濯槽から脱水槽に洗濯物を移す時、手が凍えそうになって、ちょっと憎らしくなる時もあります。

 物は、ぜいたくじゃなくていいです。不便なほど自然の条理に近いように感じます。お互いの不利点を補いながら向き合っていけるので、つまらなくない。不格好なほど味わい深くて面白いんです。
 姉が「そういえば、うちの旦那様も不格好だ」と言いました。
 私は「そういえば、そうだね」と言いました。
 姉が「時々格好悪すぎて、むしょうに腹が立つ」と言いました。
 私は「とっても分かる気がする」と思いました。
 私は「旦那様も腹立ってるのかな」と言いました。
 姉が「そうかもしれない。やばい」と言いました。



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