2001年(平成13年)4月1日号

No.139

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(8)

-さくら並木−

芹澤 かずこ

 

 梅や桃もいいけれど、桜の満開の時の、あの何ともいえない華やかさに惹かれます。日本の風土に桜が合うのか、日本人が好むから植えるのか、どこに行っても見事な桜を見ることが出来て嬉しい限りです。

 娘時代を過ごした目黒川沿いの桜も綺麗でしたが、結婚して移り住んだ中野でも、哲学堂までの通りに若い桜が植えられ、子供の成長に合わせて桜ものびのびと育って、3人の子供たちはその並木道を通ってそれぞれの学校の入学式に臨みました。

 昨年、久しぶりに訪れてみますと、40数年経った桜並木は見事な古木となり、歩道橋が覆い被さるほどに枝を張って、満開の花をつけていました。近くの新井薬師公園の桜も、哲学堂公園の桜もそれは見事になり、この一帯は今では桜の名所に数えられ、花見客で大賑わいをしていました。

 20年ほどまえに「桜新町」という名前に惹かれて今の所に越して来ました。家の前の通りには八重桜が植えられ、これまたソメイヨシノとは一味ちがった重厚な趣があります。商店街主催のさくら祭りの時には、歩行者天国となり、世田谷警察や駒澤大学のブラスバンドの演奏があったり、商店の旦那衆による素人の屋台が出たりして、これまた大賑わいです。

 近場での花見の機会が多いので、あまり遠出をしたことはありませんが、何年か前に知人に誘われて埼玉県の幸手の土手に出向いたことがあります。前日が雨で、その日は朝から快晴。1キロほどの土手の桜は満開のトンネルで、そろそろ散り始めていました。その散り方たるや、少し水気を含んだ花びらが、風もないのにひらひら、ひらひら、まるで舞台のさくらのように舞い降りて、下を行く人の頭や肩に降りかかるのです。ひらひら、ひらひら、まるで幽玄の世界にいるようでした。もう一度、ぜひ見てみたいと思いますが、いろいろな条件がうまく重ならないと、なかなか見られない情景でしょう。

 最近、配布された情報紙「南山の手リビング」の“地元の人がそっと教えてくれた、自慢のお花見コース”に、我が「桜新町」駅から東急東横線の「都立大学駅」の方まで続く呑川緑道の長い長い桜並木の紹介記事が載っていました。まだ端から端まで歩いたことがないので、なにも遠くに行かなくても今年は地元でゆっくり楽しもうと、この週末に予定を立てています。



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