2000年(平成12年)11月20日号

No.126

銀座一丁目新聞

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横浜便り(14)

分須 朗子


 まだ学生の頃、小雪を「こゆき」だとばかり思っていた。
 季節の暦の中でも、名前がかわいいから、すごく好き。
 春生まれの私だが、積雪の日に未熟児で生まれたらしいので、「小雪」とか「雪小」とかの名前が良かったのに、とよく考えていた。
 どうしてか、この時季になると、翌年の手帳を選んだりする。
 新しい手帳を買うと、いろいろ書き込みたくなるのだが、毎年しみじみ感嘆するのは、アドレス頁に記入する数。
 年々減っていくのだ。昨年末に、あやふやな思いで記入した名前は、今年は確実に抹消されることになる。
 それともう一つ、知人の誕生日の数。ここ長い間、新しい日付を埋めることは本当に稀で、こちらも、年々減っていく。
 あと、いつも、「ずるいな」と思うことがある。
 12月生まれの人だ。
 新しい手帳を買うと、たいてい、今年の12月の頁が付いている。そうすると、12月生まれの人の誕生日は、来年の分と今年の分があって、一冊の手帳に二度記名されることになる。
 「ずるい」に関して、さらに、新しい問題が浮上した。
 死んだおばあちゃんの誕生日だ。
 もういないのだけれど、なんとなく書かないわけにはいかなくて、仕方なしに記入する。しかも、彼女の強い要請から、記入名(呼び名)は「おばあちゃま」。「ま」より「ん」の方が書きやすいのに、と思いながら。
 そして、今度から、“おばあちゃまの日”として、命日も記入することになったものだから、書き込む時に悩んでしまった。どちらかにしたくなる。
 考えているうちに、おばあちゃま元気かなぁ、と思った。もっとデパートへ買い物につき合えばよかったなとか、もっとレストランへ外食につき合えばよかったなとか、もっともっと・・・となって、しまいには、もっと優しくすればよかったなとか思い始めたらきりがなくて、今いる大切な人たちを見回してみたりした。
 結果、もうこの際と思って、敬老の日にも“おばあちゃま”と書いておいた。



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