2000年(平成12年)7月10日号

No.113

銀座一丁目新聞

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茶説

仕事に対する責任感はどこへいった?

牧念人 悠々

 昨今はどうも仕事に対する責任感、職業倫理といったものが崩れつつあるように思えてならない。一万人以上の被害者をだした雪印乳業大阪工場の食中毒事件はその典型的な例である。食品を製造しているのだから、細心の注意を払っているのかと思っていたら、会社の内規を守らず、手ぬきしているずさんな衛生管理の実態が明らかになった。
 今回の中毒事件の原因となった黄色ブドウ球菌が検出された製造ラインのバルブの汚れはほぼ全体に広がっていたという。社内内規ではバルブ部分は使用後毎回水洗いし、週一回タンクから取り出し、洗剤で洗浄する規定になっている。これを怠ったため事件は起きた。
 現場の責任者は日ごろどのような点検、管理をしていたのか、担当者は何故規定通り洗浄しなかったのか。各自が職責に応じやるべき基本的なことをしていたらこのような事件は防げたはずである。食品の製造過程を不潔にしていたら、どんな不測の事態がおきるのか想像できよう。
 昭和30年6月、岡山県を中心にして森永砒素ミルク中毒事件が起きている。粉ミルクに砒素が混入、1万1788人の患者を出し、うち133人が死亡した。原因は本来、廃棄処分にすべきであった工業用第二燐酸ソーダの粗悪品を使ったためであった。これも考えられない事件であった。一歩誤れば人命にかかわる食品製造に対する衛生管理のずさんさ、職業人としての責任感の欠如は全く同じである。
 雪印大阪工場の発表のまずさは会社の体質をそのまま表わしている。中毒事件は起こるべくして起きたといえる。現場主義を社長以下幹部は忘れている。日ごろから現場へ足を運べば、危険の芽を見つけることができたはずである。
 日本人の仕事に対する潔癖までの責任感はどこへいったのか。規則をかたくなまでに守る愚直さは・・・望むのは無理なのであろうか。

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